地方受験は準備の量が違う

美大・芸大の多くは東京や大都市に集まっています。地方に住んでいる受験生にとっては、試験会場に行くこと自体が一つの大きな準備になります。

移動の手段、宿、画材の運搬、そして何日も続く実技試験の間の生活。どれか一つでも手配が遅れると、せっかく一年かけて準備してきた力を、試験当日に出し切れなくなってしまいます。

このページでは東京の美大を例に書いていますが、京都や名古屋、金沢など、ほかの地域の芸術大学を遠方から受験する場合も考え方は同じです。

交通手段は早めに押さえる

地方から東京へ向かう手段は、新幹線、飛行機、高速バスが中心です。

美大の実技試験がある1月から3月は、一般の大学入試の時期とも重なり、受験生の移動が集中します。出願を終えたら、試験日が確定した時点で、すぐに往復の予約を入れておきましょう。旧版でも書いたように、「願書は出したのに、交通手段が取れずに受けに行けない」という事態だけは避けなければなりません。

費用を抑えたい人には高速バスが選択肢になりますが、夜行バスで早朝に着いてそのまま試験に向かうのはおすすめしません。体力を大きく消耗しますし、雪や渋滞で到着が遅れることもあります。どの手段を選ぶにしても、試験の前日までに東京に着いておくのが基本です。

飛行機で運べない画材がある

飛行機で移動する人は、画材の中に機内に持ち込めないもの、預けられないものがあることに注意してください。

テレピンやペトロールなどの揮発性の画用液や、多くの筆洗液は、火のつきやすい液体として扱われ、機内持ち込みも預け入れもできないのが一般的です。フィキサチーフなどのスプレー類も、制限の対象になることがあります。

こうしたものは、東京に着いてから画材店で買う前提で計画を立てましょう。試験会場の周辺や都内には大きな画材店がいくつもありますが、試験直前は受験生が集中するので、到着した日のうちに買っておくと安心です。

油絵の具や、そのほかの画材についても、扱いは航空会社や品目によって変わることがあります。出発前に、利用する航空会社の案内で確認しておいてください。また、宅配便で宿に送る方法もありますが、引火性の液体は宅配便でも送れないことが多いので、同じように注意が必要です。

宿は試験会場の近くに

宿も、交通手段と同じく早めの予約が欠かせません。

ここで一つ、旧版を書いた本人の失敗談を残しておきます。宿の予約が取れず、試験の前の晩をネットカフェで過ごしたことがあります。仮眠はとれても体はほとんど休まらず、翌日の試験に最悪のコンディションで臨むことになりました。試験当日を万全の状態で迎えるためにも、ちゃんと眠れる宿を確保してください。

宿を選ぶときは、試験会場までの移動時間と乗り換えの少なさを優先しましょう。美大のキャンパスは都心から離れた場所にあることも多く、「東京のホテル」というだけで選ぶと、毎朝の移動に思った以上の時間がかかることがあります。大きな画材の荷物を持って満員電車に乗るのも大変です。

大学や大学生協が、受験生向けに宿泊の案内をしていることもあります。志望校の受験案内を確認してみてください。

長く滞在するときは

美大受験では、実技試験が数日にわたって続いたり、私立美大と国公立の芸術大学をいくつも併願して、試験の日程が何週間にも及んだりすることがあります。

一度地元に帰るか、東京に滞在し続けるかは、試験日程と交通費、宿泊費を並べて考えましょう。滞在が長くなる場合は、ホテルに泊まり続けるより、ウィークリーマンションのように台所や洗濯機のある部屋を借りた方が、費用も生活も楽になることがあります。

東京に親戚や知り合いがいて泊めてもらえる場合も、試験の期間中は生活のリズムを自分で決められるように、事前によく相談しておきましょう。

試験の前日にやっておくこと

前日に東京に着いたら、できれば試験会場まで一度行ってみましょう。駅からの道順、所要時間、入口の場所を確かめておくだけで、当日の不安はずいぶん減ります。

現地で買う必要のある画材をそろえ、持ち物を募集要項の持参物リストと照らし合わせて確認します。作業着や予備の道具も忘れずに。当日持っていくものについては画材以外の必需品にまとめています。

そして、前日の夜は早めに休んでください。慣れない場所で緊張して眠れないこともありますが、横になって体を休めるだけでも違います。

お金の見通しを立てておく

地方からの受験では、受験料のほかに、交通費、宿泊費、滞在中の食費、現地で買う画材の費用がかかります。複数の大学を受ければ、その分だけ積み重なっていきます。

受験する大学を決める段階で、試験日程と移動の計画をあわせて考え、全体でどのくらいの費用になるのか、家族と一緒に見通しを立てておきましょう。費用の面から、受験校の組み合わせや滞在の仕方を工夫することも、立派な受験戦略の一つです。

入試の時期の流れは美大受験の準備はいつ・何から始めるか、入試方式や日程の考え方は美大・芸大の入試の仕組みを参考にしてください。