美大入試を一言でいうと

美大・芸大の入試は、一言でいえば「実技を中心に、学科や書類を組み合わせて判定する試験」です。

普通の大学受験との一番の違いは、試験会場で絵を描いたり、ものをつくったりする実技試験があることです。多くの大学では実技の比重が大きく、合否を左右するのも実技です。

ただし「実技さえできればいい」わけではありません。学科試験や大学入学共通テスト、調査書、面接なども、大学や学科によっては合否に関わります。何がどのくらい重視されるのかは大学ごとに違うので、志望校ごとに確認することが、受験準備の第一歩になります。

主な入試方式

一般選抜

もっとも多くの受験生が受ける方式です。大学が行う実技試験に、国語や英語などの学科試験、または大学入学共通テストの成績を組み合わせて判定します。実技と学科の配点の比率は、大学や学科によって大きく違います。

共通テスト利用方式

私立美大の中には、大学入学共通テストの成績だけ、あるいは共通テストと実技を組み合わせて判定する方式を設けているところがあります。実技の負担が少ない方式もあるので、学科が得意な人にとっては併願の選択肢になります。

総合型選抜・学校推薦型選抜

ポートフォリオ(これまでの作品をまとめたもの)や面接、プレゼンテーション、小論文などで判定する方式です。多くの私立美大が実施していて、一般選抜より早い時期に合否が決まります。

一方、東京藝術大学の美術学部のように、こうした方式を行っていない大学もあります。どの方式があるかは、大学ごとに必ず確認してください。

そのほかの方式

社会人入試、帰国生入試、編入学試験などを設けている大学もあります。社会人になってから美大を目指す人は、一般選抜とあわせて調べておくとよいでしょう。

実技試験は学科によってまったく違う

同じ美大でも、学科が違えば実技試験の中身はまったく別物です。代表的な例を挙げると、次のようになります。

絵画(油画):鉛筆や木炭による素描(デッサン)と、油彩などによる作品制作。与えられたテーマから自分で画面を構想する力が問われることが多い分野です。

絵画(日本画):鉛筆による素描と、水彩などによる着彩写生。モチーフを正確にとらえる力がとくに重視されます。

デザイン:鉛筆デッサンと、色彩構成や平面構成。大学によっては立体構成や、アイデアを文章と図で表す課題もあります。

彫刻・工芸:デッサンに加えて、粘土による塑造などの立体表現。

建築・映像・芸術学など:空間表現、小論文、学科試験の比重が大きい学科もあり、ほかの学科とは準備の仕方が大きく変わります。

学科によって必要な画材も練習すべき内容も違うので、志望学科は早めに絞っておくと準備が無駄になりません。画材については美大受験に必要な画材でまとめています。

学科試験を甘く見ない

美大受験の世界では昔から「実技さえできれば学科は関係ない」と言われることがあります。このサイトの旧版にも、そう読める内容を書いていました。

しかし、学科の扱いは大学によって違い、関係ないと言い切れるものではありません。

たとえば東京藝術大学の美術学部では、学部・学科が指定する大学入学共通テストの教科・科目をすべて受験していないと、無資格(失格)として扱われます。点数の比重が小さい学科であっても、受け忘れや科目の選び間違いは、それだけで不合格につながります。

私立美大では、国語や英語の学科試験が実技と同じように点数化されることも珍しくありません。実技が同じくらいの受験生の間では、学科の点数が合否を分けることもあります。

学科の対策については共通テスト対策のページでくわしく扱います。

例:東京藝術大学 絵画科油画専攻の場合

このサイトがもともと扱っていた、東京藝大の油画専攻を例に、実際の入試の流れを見てみましょう。

第1次試験と第2次試験

東京藝大の美術学部では、建築科と芸術学科を除き、個別試験を第1次試験と第2次試験の二段階で行います。第1次試験に合格しなければ、第2次試験は受けられません。

油画専攻の場合、第1次試験は素描です。第1次試験の合格者だけが第2次試験に進み、素描と油彩による実技に加えて、美術学部では油画専攻だけが課している面接を受けます。第2次試験は数日にわたって行われます。

ここで大事なのは、第2次試験は受験生全体ではなく、第1次試験を通過した人たちの中での選抜だということです。まずは第1次試験を確実に通過することが、合格への最初の関門になります。

課題は予想できない

油画専攻の課題は、年度によって内容が大きく変わり、何が出るかを予想するのは難しいことで知られています。

旧版で紹介したように、過去には持参するよう指定された画材とは違う紙が配られた年や、会場で渡された画材だけで描かせる年もありました。形式はある程度決まっていても、中身はその場で初めてわかるものと考えておくべきです。

だからこそ、決まった課題の練習を繰り返すだけでなく、どんなテーマが出ても自分の描き方で対応できる準備が必要になります。その考え方は合格作品から学び、自分の描き方の型をつくるで紹介しています。

何が評価されるのか

受験生の間では、昔から「教授の投票で決まる」「何票入れば合格」といった話が語られてきました。ただ、これはあくまで噂の域を出ません。

大学側は、素描では出題に対する構想力と構成力を、油彩ではそれに加えて形と色による総合的な造形表現の力を評価すると説明しています。噂に振り回されるより、こうした公式の評価の観点を意識して作品をつくる方が、ずっと確実です。

過去の課題の例は過去の入試課題と傾向で紹介しています。

入試の時期の目安

総合型選抜は、早いところでは秋ごろから選考が始まります。一般選抜の場合、大学入学共通テストは例年1月中旬、私立美大の実技試験は1月から2月ごろ、東京藝大の実技試験は2月下旬から3月上旬ごろに行われることが多いです。

私立美大と東京藝大を併願する場合は、実技試験が続く長い期間を乗り切ることになります。体力の配分や、画材の運搬、宿泊の手配も含めて計画を立てておきましょう。地方から受験する人は地方から東京の美大を受験するときも参考にしてください。

志望校の募集要項で確認すること

最後に、志望校が決まったら募集要項で必ず確認しておきたいことをまとめておきます。

ひとつは、実施している入試方式と、それぞれの出願期間です。次に、実技試験の内容と、持参する画材の指定。そして、学科試験や共通テストで必要な教科・科目と、実技との配点の比率です。面接やポートフォリオの提出があるかどうかも見ておきましょう。

これらは毎年のように変更されます。このページの内容は全体像をつかむための目安として使い、最終的な判断は必ず最新の募集要項で行ってください。