いつから始めればいいのか
美大受験の準備は、早く始めるほど有利です。けれど、「もう遅い」ということもありません。
実技の力は短期間では身につきにくいため、高校1・2年生のうちからデッサンを始める人が多いのは事実です。一方で、高校3年生になってから本格的に始めて合格する人もいますし、浪人してから、あるいは社会人になってから美大を目指す人もいます。
大切なのは、始める時期よりも、始めるときの順番です。いきなり毎日デッサンを描き始めるより、先にいくつかの準備をしておいた方が、同じ努力が無駄になりません。このページでは、その順番を紹介します。

1. まず情報を集める
最初にやるべきことは、絵を描く練習よりも、情報を集めることです。旧版でも「絵を描く練習の前に最低限の情報を集めよう」と書きましたが、これは今も変わりません。
まずは、美大・芸大の入試がどんな仕組みなのかを知りましょう。美大・芸大の入試の仕組みと倍率と難易度の見方で全体像をつかめます。
次に、合格者の作品を見てください。予備校の公式サイトやSNSで、どんなレベルの作品が合格しているのかを知ることができます。気になった作品は保存しておきましょう。あとで自分の描き方の型をつくるときの大事な材料になります。
最初は「こんなの描けるわけがない」と感じるかもしれません。それで大丈夫です。今の自分と合格ラインの距離を知ることが、準備の出発点になります。
2. 学科と志望校を考える
美大の学科は、絵画、彫刻、デザイン、工芸、映像、建築、芸術学など幅広く、学科によって入試の課題も、必要な画材も、卒業後の進路も大きく変わります。
「絵が好きだから油画」とすぐに決めてしまう前に、ほかの学科も一度見ておきましょう。デザインや映像、芸術学など、自分が思っていた以上に向いている分野が見つかることもあります。卒業後にどんな仕事をしたいかという視点で考えてみるのも一つの方法です。
学科の雰囲気を知るには、各大学のオープンキャンパスや、学生の作品が一堂に並ぶ卒業制作展に足を運ぶのが一番です。多くは誰でも見学でき、在学生に直接話を聞けることもあります。
この段階で志望校を一つに絞る必要はありません。ただ、学科の方向性だけでも早めに決めておくと、このあとの練習や画材の準備が無駄になりません。
3. 学び方と画材を決める
学科の方向性が見えてきたら、どこで、どう学ぶかを決めます。予備校に通うのか、学校の美術部や独学を中心にするのか、講習会やオンライン講座を組み合わせるのか。それぞれの特徴と費用は予備校か独学か、学び方と費用で比べています。
あわせて、練習に必要な画材をそろえます。最初から全部を買う必要はありません。まずは鉛筆デッサンの道具から始めて、志望学科に合わせて少しずつ買い足していきましょう。何が必要かは美大受験に必要な画材でまとめています。
4. 基礎デッサンを始める
ここまで来たら、いよいよ実技の練習です。どの学科を目指すにしても、ほとんどの美大入試で土台になるのは鉛筆デッサンです。
最初は、静物や石膏像など、動かないモチーフをじっくり観察して描くことから始めましょう。形を正確にとらえる力と、明るさと暗さの違いを見分ける力が、すべての基礎になります。
慣れてきたら、時間を計って描くことを習慣にしてください。美大の入試は制限時間の中で作品を仕上げる試験です。時間をかければ描けるものを、決められた時間の中で描けるようにすることが、受験の実技練習の中心になります。
5. 学科の勉強も並行する
実技の練習を始めると、つい学科の勉強が後回しになりがちです。けれど、多くの美大では学科試験や大学入学共通テストの成績も合否に関わりますし、指定された科目を受けていないと受験資格そのものを失う大学もあります。
学科の勉強は、直前に詰め込むよりも、実技と並行して少しずつ進めておく方がずっと楽です。志望校で必要な科目を早めに確認して、計画に組み込んでおきましょう。対策の考え方は共通テスト対策で扱います。

受験学年の一年の流れ
受験する年の一年は、おおまかに次のように進みます。時期は大学によって違うので、目安として見てください。
春:志望校と学科をある程度絞り込み、その大学の課題の形式に合わせた練習を始めます。
夏:オープンキャンパスが多い時期です。予備校の夏期講習などで、集中して描く量を増やす人も多い時期です。
秋:総合型選抜の出願と選考が始まります。一般選抜を受ける人は、過去の課題を本番と同じ制限時間で描く練習を増やしていきます。
冬:出願の準備と、大学入学共通テストがあります。実技は直前の仕上げの時期です。
1月〜3月:私立美大と国公立の芸術大学の実技試験が続きます。体調管理と、画材の準備や移動の段取りも大切になります。地方から受験する人は地方から東京の美大を受験するときも読んでおいてください。
出願期間や試験日程は毎年変わります。志望校が決まったら、最新の募集要項で日程を確認し、手帳やカレンダーに書き込んでおきましょう。
気持ちの準備
旧版のこのページでは、半分以上を気持ちの準備の話に使っていました。少し言い過ぎていた部分もありましたが、伝えたかったことの芯は今も変わりません。
それは、「受かるかどうか分からないけれど、なんとなく受けてみる」のではなく、「合格する」と目標を決めてから準備を始めてほしい、ということです。
できない理由を探し始めると、いくらでも見つかります。倍率が高い、予備校が近くにない、始めるのが遅かった。そう考えてしまうときは、代わりに、どうすればできるかを考えてみてください。情報を集め、合格作品を見て、自分にも届きそうな部分を一つでも見つけられれば、それが最初の足がかりになります。
受験期の気持ちの保ち方については、長期戦の受験メンタルを保つでくわしく書いていきます。