イラストレーターの仕事

絵を描いて生きていく道として、多くの人が最初に思い浮かべるのがイラストレーターだと思います。

仕事の場は幅広く、ゲームのキャラクターや背景、書籍の装画や挿絵、広告のビジュアル、商品のパッケージやグッズ、webサイトやアプリの挿絵、配信者のキャラクターデザインなどがあります。会社に所属して描く人もいれば、フリーランスとして依頼ごとに受ける人もいます。

ただし、この仕事の環境は、この15年ほどで何度も大きく変わってきました。今からこの道を目指すなら、その変化を知っておく価値があります。

2010年代:仕事が一気に増えた時期

スマートフォンの普及とともに、ソーシャルゲームが急速に広がりました。カードやキャラクターのイラストが大量に必要とされ、絵を描ける人の仕事が一気に増えた時期です。

この時期には、美大や専門学校を出たばかりの人にも仕事が回り、在宅で描く働き方も広がりました。並行して、書籍や広告、グッズの仕事もあり、絵で食べていくことが以前より現実的になった時代だったといえます。

この背景については美大卒業後の進路と、時代ごとの経済環境でも取り上げています。

2020年代:内製化と生成AI

外注が減った

2020年代に入ると、企業がコストを抑えるために、それまで外注していた制作を社内で行うようになりました。社内にデザイナーを置き、既成の素材やツールを使って済ませる。外部のイラストレーターに回っていた仕事の一部が、ここで減りました。

生成AIがワークフローに入った

2022年ごろから画像生成AIが広く使われ始め、数年のうちに制作現場のワークフローに組み込まれました。ラフ案を何十枚も出す作業、素材を加工する作業、量産が必要な部分は、AIで処理されることが増えています。

この変化は、実際に仕事にも影響しています。クラウドソーシングのような、単価が低めで量の多い案件では、イラストの依頼そのものが減る傾向が報告されています。2026年1月に発表された、クリエイター約2万5000人を対象とした調査では、とくにイラストレーターや漫画家、アニメーターといった絵を描く人たちが、生成AIの浸透によって心理的な不安を抱え、創作が萎縮している状況が示されました。

使う側に回る人も

一方で、AIを道具として使う動きも進んでいます。フリーランスのイラストレーターやデザイナーを対象にした2025年末の調査では、画像生成AIは労働を置き換えるものではなく、業務を補助する道具として位置づけられており、期待されているのは主に業務の効率化とアイデア出しだという結果が出ています。

つまり今は、仕事が単純に消えたというより、仕事の中身が入れ替わっている時期です。描く量をこなす仕事は減り、何を描くかを決める仕事、AIの出力を判断して仕上げる仕事、その人の絵でなければならない仕事が残っています。

これから目指す人が考えておくこと

「その人の絵」が意味を持つ

AIが平均的にうまい絵を大量に出せるようになったぶん、誰が描いたかがはっきり分かる絵の価値は、むしろ上がっています。絵柄だけでなく、題材の選び方、画面の構成、描かれた人物や空間の説得力。そうしたものは、美大の受験や在学中に積み上げてきた観察と制作の経験が支えになります。

権利の問題が仕事に直結する

生成AIの登場以降、イラストの仕事では著作権の扱いがこれまで以上に重要になりました。納品した絵をAIの学習に使ってよいのか、AIで作った素材を使った納品が許されるのか。こうした点を契約で定める案件が増えています。権利や契約の基本はイラストの仕事の受け方と契約・権利で扱います。

収入の形を考えておく

イラストの仕事は、景気や技術の変化の影響を受けやすい仕事です。依頼を受ける仕事だけに頼らず、グッズや同人誌などの自主的な販売、教える仕事、社内のデザイナーとしての勤務など、複数の形を組み合わせている人も多くいます。

また、会社に所属して描くという選択肢も忘れないでください。ゲーム会社や制作会社で経験を積み、人とのつながりをつくってから独立する人も少なくありません。職種の全体像は美大卒の主な職種を見てください。

在学中にできること

イラストレーターを目指すなら、学生のうちからできることがあります。

描いた作品を人が見られる場所に出し続けること。仕事として通用する形(指定のサイズ、期限、修正への対応)で描く経験を積むこと。同人誌やグッズをつくって、自分で価格をつけて売ってみること。そして、ポートフォリオを整えておくこと。

こうした経験は、そのまま仕事につながります。進路と経済環境のページのコラムに書いたように、この業界では「この人に任せて大丈夫だった」という記録が人づてに伝わって、次の仕事になります。学生のうちの一枚一枚が、その記録の始まりです。