美大生の就活は少し違う

美大生の就職活動が一般の大学生と違うのは、作品を見せて選ばれるという点です。

エントリーシートや面接に加えて、ポートフォリオの提出と、それをもとにした面接が行われます。企業によっては、その場で課題を出されることもあります。つまり、これまで何をつくってきたかが、そのまま選考の材料になります。

もう一つの違いは、採用の進み方です。一般の企業は年度ごとにまとまった採用を行いますが、デザイン事務所や小さな制作会社は、必要になったときに募集する形も多く、卒業間際に求人が出ることもあります。「みんなと同じ時期に終わらない」ことは、珍しくありません。

ポートフォリオのまとめ方

選んで並べる

作品を全部載せる必要はありません。見る側は一人に長い時間をかけられないので、自信のある作品を前に置き、流れが分かるように並べます。いちばん見せたい作品を最初に持ってくるのが基本です。

考えたことを書く

完成した絵やデザインだけでなく、何を課題として、どう考えて、その形にしたのかを短い文章で添えましょう。とくにデザイン職では、きれいにつくれることと同じくらい、なぜそうしたのかを説明できることが見られます。ラフやスケッチを載せて、考えの過程を見せるのも効果的です。

相手に合わせて組み替える

同じポートフォリオをどこにでも出すのではなく、応募先の仕事に近い作品を前に持ってくるなど、相手に合わせて入れ替えます。パッケージの会社なら立体やパッケージの作品を、web系の会社なら画面の設計に関わる作品を、という具合です。

形式を整える

冊子として印刷したものと、データやwebで見せられるものの両方を用意しておくと、どの選考にも対応できます。作品の写真は、明るさや色が正確に出るように撮り直しておきましょう。作品の記録は、卒業後の活動でもそのまま役に立ちます。

時期の目安

一般の企業を受ける場合、例年は大学3年生(大学院1年生)の3月ごろから会社説明や応募が始まり、6月ごろから選考が本格化する、というのが基本的な流れです。ただし、実際には前倒しが進んでいて、インターンシップが実質的な選考の入口になっていることも珍しくありません。

美大生の場合、この時期は制作や展示と重なります。卒業制作の時期に就職活動が重なって身動きが取れなくなる人もいるので、学年の早いうちから予定を組んでおきましょう。計画の立て方は受験計画の立て方の考え方がそのまま使えます。

採用の日程は年度によって変わります。志望する企業や大学のキャリア支援の窓口で、最新の情報を確認してください。

応募先の探し方

大学のキャリア支援窓口:美大には、その大学に届く求人が集まります。卒業生の進路の記録も見られるので、まず足を運んでみてください。

卒業生とのつながり:先輩がどこで働いているかを知ると、仕事の実態が見えてきます。この業界では、紹介から仕事や採用につながることも多くあります。

作品を公開しておく:SNSやポートフォリオサイトを見た企業から声がかかることもあります。

展示に来てもらう:卒業制作展には、企業の人も見に来ます。名刺を渡される機会があるかもしれません。

求人サイト:クリエイティブ職に特化した求人サイトもあります。

応募先を見極める

作品集や会社の実績が魅力的でも、働く場所としてどうかは別の問題です。次の点は確認しておきましょう。

勤務時間と休日、残業の実態。新人がどんな仕事から始めるのか。教育や引き継ぎの体制があるか。社内にデザイナーが何人いるのか。そして、離職の状況です。

面接は、選ばれる場であると同時に、こちらが相手を見る場でもあります。質問する時間があれば、実際の一日の流れを聞いてみてください。

作家活動と就職

「就職したら作家をあきらめることになる」と考える人がいますが、そうとは限りません。

勤めながら制作を続け、展示やコンペに出している人はたくさんいます。収入が安定しているからこそ、売れる売れないに左右されずに制作できるという面もあります。作家として生きるということで書いたように、収入の柱を複数持つことは、長く続けるための現実的な備えです。

逆に、卒業後すぐに就職しない選択もあります。制作に専念する、大学院に進む、アルバイトをしながら発表を重ねる。どれも進路の一つです。ただ、生活が成り立つかどうかの見通しだけは、早めに立てておきましょう。

美術以外の道も

美大を出て、美術やデザインと直接関係のない仕事に就く人もいます。それは失敗ではありません。

ものを観察する力、形にする力、批評を受けて直す力、締め切りまでに仕上げる力。美大で身につけたこれらは、どの業界でも通用します。実際、美大の卒業生はメーカー、出版、IT、公務員など幅広い進路に進んでいます。職種の一覧は美大卒の主な職種をご覧ください。