自分をマネジメントする
マネジメントとは、目標に向かって、人や時間やお金をうまく管理していくことです。
旧版を書いた2013年ごろは、高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んで弱小野球部を立て直すという小説がベストセラーになっていて、私もその話を引き合いに出しました。美大受験でいえば、管理する相手は自分自身です。
同じくらいの実力、同じくらいの努力量でも、自分の時間と練習をうまく管理できる人と、なんとなく毎日を過ごしてしまう人とでは、一年後に大きな差がつきます。このページでは、そのための計画の立て方と振り返り方を紹介します。
試験日から逆算する
計画を立てるときは、今日から先を考えるのではなく、試験日から逆算して考えます。
年間:志望校の試験日をゴールに置き、そこまでの期間を、基礎を固める時期、志望校の課題に合わせて練習する時期、本番と同じ条件で描く時期、直前の仕上げの時期に分けます。一年の大まかな流れは準備の始め方で紹介しています。
月間:その月に重点的に取り組むことを一つか二つ決めます。「今月は人物の形を正確にとる」「今月は油彩を時間内に仕上げる」といった具合です。
週間:一週間の中で、実技の練習、学科の勉強、休みの時間をどう割り振るかを決めます。
計画には、必ず余白を残しておきましょう。体調を崩したり、思ったより時間がかかったりすることは必ずあります。余白のない計画は、一度崩れると立て直せません。

目標は測れる形にする
「デッサンをうまくなる」という目標は、達成できたかどうかが分かりません。
「石膏デッサンを、6時間で最後まで描き切れるようになる」「講評で毎回指摘される形の狂いを、3枚続けて指摘されないようにする」のように、できたかどうかを自分で判断できる形にしましょう。目標が具体的になれば、そのために何をすればいいかも具体的になります。
PDCAサイクルで回す
旧版でも紹介したのが、PDCAという基本的なマネジメントの考え方です。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の頭文字をとったもので、この4つを一つのサイクルとして繰り返します。
Plan(計画):目標を決め、そのために何をするかを計画します。
Do(実行):計画にそって、実際に描きます。
Check(評価):計画どおりにできたか、目標に近づいたかを振り返ります。
Act(改善):うまくいかなかった原因と、次に変えることを決め、次の計画に反映させます。
大事なのは、Check と Act を飛ばさないことです。描きっぱなしで次の一枚に進むと、同じ失敗を何度も繰り返してしまいます。講評との向き合い方で紹介した「講評を次の一枚に生かす手順」は、このサイクルを一枚ごとに回すことでもあります。
この考え方を知っているかどうかだけでも、漠然と受験に取り組むのとは大きな差がつきます。

練習の記録をつける
振り返りを確かなものにするために、練習の記録をつけましょう。
描いた作品はすべて写真に撮り、日付、課題、かかった時間、うまくいったこと、うまくいかなかったこと、講評で言われたことを一緒に残しておきます。ノートでも、スマートフォンのメモやアプリでもかまいません。
記録がたまってくると、自分がどんな課題でつまずきやすいのか、どのくらいの時間で描けるようになってきたのかが、目に見えて分かるようになります。スランプのときに昔の作品を見返せば、確かに前に進んでいることを確かめる材料にもなります。
週に一度の振り返り
一枚ごとの振り返りに加えて、週に一度、少し長い目で振り返る時間をつくりましょう。
その週に描いた作品を並べて、月間の目標に近づいているかを確かめます。実技と学科の時間配分は予定どおりだったか、休みは取れていたかも見直します。そのうえで、次の一週間の計画を立て直します。
計画どおりにいかなかった週があっても、自分を責める必要はありません。計画は、守るためだけでなく、ずれに気づくためにあるものです。ずれに気づいたら、計画の方を直せばいいのです。
良い指導者とは
旧版では、良い予備校の講師とは、芸術について何時間もうんちくを語れる人ではなく、生徒をうまくマネジメントして合格へ導ける人だと書きました。これは今もそう思っています。
目標をはっきりさせ、一人ひとりの課題を見極め、ときに励ましながら、合格までの道のりを一緒に組み立ててくれる人。予備校や講師を選ぶときの一つの目安にしてください。
そして、独学の人にとっては、その役割を自分自身が担うことになります。自分の講師になったつもりで、自分の計画を立て、振り返ってみてください。学び方の選び方については予備校か独学か、学び方と費用を参考にしてください。
もっと深くマネジメントについて知りたい人は、旧版でも紹介したドラッカーの『マネジメント[エッセンシャル版]』など、ビジネス書を手に取ってみるのもよいでしょう。