試験の油絵は時間との勝負

油画専攻などの入試では、デッサンに加えて、油彩で作品を仕上げる試験があります。

本来、油絵は何週間、何か月もかけて、乾かしながら描き重ねていくものです。けれど入試では、数日という限られた時間の中で一枚を完成させなければなりません。そのため受験の油絵では、速く乾かすための画用液を使ったり、下地にアクリル絵の具を併用したりといった工夫が欠かせません。

このページでは、受験の油絵に必要な道具を、キャンバス、絵の具、筆とナイフ、画用液、後片付けの順に紹介します。道具の数は多いですが、一度そろえれば長く使えるものも少なくありません。

キャンバス

受験の練習では、合格までに何十枚もの油絵を描くことになります。店で張ってあるキャンバスを一枚ずつ買うと、それだけでかなりの費用になります。そこで旧版からおすすめしているのが、自分でキャンバスを張ることです。

必要なのは、木枠、ロール状で売られているキャンバス地、布を引っ張るためのキャンバスプライヤー(張り器)、布を留めるタックス(キャンバス用の釘)とハンマー、張り替えのときに釘を抜く釘抜きです。最近は、タックスの代わりにタッカー(大きなホチキスのような道具)を使う人もいます。

木枠の大きさは、志望校の試験で使うキャンバスのサイズに合わせてください。同じサイズの木枠を2つ以上用意しておくと、一枚を乾かしている間に次の一枚を描けます。描き終えた練習作品の布をはがし、新しい布を張り直せば、木枠は何度でも使えます。

油絵の具

油絵の具は色の種類も値段も幅広く、店に行くと目移りします。けれど、たくさんの色をそろえる必要はありません。旧版で紹介した次の9色があれば、混色でほとんどの色をつくることができます。

バーミリオンヒュー(朱色)
クリムソンレーキ(深い赤)
パーマネントイエロー(黄)
パーマネントグリーン(明るい緑)
ビリジャン(青みの緑)
コバルトブルーヒュー(青)
パーマネントバイオレット(紫)
アイボリーブラック(黒)……少し大きめのチューブで
チタニウムホワイト(白)……大きめのチューブで

白は、ほかのどの色よりも早くなくなります。大きいサイズを買っておきましょう。慣れてきたら、よく使う色や、混色では出しにくい色を少しずつ足していけば十分です。

また、旧版で紹介したアルミナホワイトは、ほとんど色がなく透明に近い白い絵の具で、絵の具のボリュームを増やしたり、つやを抑えたりするのに使われます。必須ではありませんが、厚く塗る表現をしたい人は試してみてください。

筆・ナイフ・パレット

油絵用の筆:大きさの違う平筆を5本程度と、細部を描くための面相筆を2本ほど。ほかに、広い面を塗るための刷毛を、柔らかいものと硬いものの2種類持っておくと便利です。

ペインティングナイフ:絵の具を混ぜたり、画面に直接絵の具を置いたり削ったりするのに使います。形の違うものを2本以上持っておきましょう。試験の油絵では、ナイフを使いこなせると表現の幅も速さも大きく変わります。

パレット:使い終わったらはがして捨てられる紙パレットが、片付けの手間が少なく、受験の練習や試験に向いています。

油壺・描き皿:画用液を入れておく小さな容器です。

道具箱と筆立て:油絵の道具は、絵の具や油で汚れるので、デッサン道具とは別の箱に入れます。筆立ては空き缶などでも十分です。

画用液(溶き油)

油絵の具は、画用液で溶いて使います。画用液によって、乾く速さや絵の具の伸び、仕上がりのつやが変わります。

テレピン・ペトロール:絵の具を薄めるための揮発性の油です。描き始めの薄塗りによく使います。においの少ない無臭タイプのものもあります。

ペインティングオイル:乾性油や樹脂などをあらかじめ調合した画用液で、これ一本で絵の具を溶いて使えます。

速乾性の画用液(速乾メディウム):絵の具の乾燥を速めるための画用液です。限られた時間で描き重ねていく受験の油絵では、ほぼ必須といってよい道具です。

画用液の種類や混ぜ方で、描き心地は大きく変わります。練習のうちにいろいろ試して、自分の描き方に合う組み合わせを見つけておきましょう。

後片付けの道具

筆洗器と筆洗液:描いている途中や描き終えた後に、筆についた絵の具を落とします。

石けん:筆洗液で絵の具を落とした後、筆を石けんと水で洗っておくと、筆が長持ちします。筆用の石けんも売られています。

拭き取り用の紙や布:旧版でも紹介したように、キッチンペーパーが使いやすく安上がりです。筆やナイフについた絵の具を拭き取るのに、大量に使います。

アクリル絵の具を併用する

油絵の具だけで描くと、下の層が乾くまで次の色を重ねにくく、時間がかかります。そこで受験の油絵では、最初の下地や描き始めをアクリル絵の具で進め、その上から油絵の具で仕上げるという方法がよく使われます。アクリル絵の具は水で溶けて、短時間で乾くので、制作時間を大きく短縮できます。

ただし、重ねる順番には注意してください。アクリル絵の具の上に油絵の具を重ねることはできますが、油絵の具の上にアクリル絵の具を重ねると、はがれやすくなります。

アクリル絵の具は、油絵の具と同じ9色程度をそろえれば十分です。ほかに、アクリル用の平筆を5本程度、ファンブラシ、面相筆、水を入れるバケツを用意します。余裕があれば、下地づくりに使うジェッソや、画面に凹凸をつけるモデリングペーストもあると表現の幅が広がります。

アクリル絵の具の筆は、油絵用の筆とは分けて使いましょう。乾くと固まって落ちなくなるので、使い終わったらすぐに水で洗うのが長持ちのこつです。

安全のための注意

油絵の具や画用液をたっぷり含んだ布や紙は、まとめて放置すると、油が乾くときに出る熱で自然発火することがあります。

使い終わったキッチンペーパーや布は、水に浸してから捨てるか、広げて乾かしてから処分してください。ゴミ袋にぎゅっと詰めたまま置いておくのは危険です。

また、テレピンなどの揮発性の画用液を使うときは、窓を開けるなどして換気をしましょう。自宅で描く場合は、家族にも一声かけておくと安心です。

試験で使える道具を確認する

油絵の試験では、使用できる描画材料や道具が募集要項で細かく指定されていることがあります。揮発性の画用液など、危険と判断された材料の使用が制限される場合もあります。

練習では使えていた画用液や道具が、試験では使えないということがないように、志望校の持参物の指定を早めに確認し、試験と同じ条件で描く練習をしておきましょう。

また、飛行機で受験に向かう人は、画用液など機内に持ち込めないものがあります。地方から東京の美大を受験するときもあわせて読んでおいてください。

デッサンの道具はデッサン道具一覧、ほかの学科の画材は美大受験に必要な画材(学科別)で紹介しています。